野生のネギトロ

120円の皿からの逃避行


5月に見た夢の話。夢にここまで連続性があって、鮮明に憶えていることは殆ど無いので記しておこうと思う。

 

俺は旅行先の宿泊施設にいる。福岡かどこか、九州旅行だったのを覚えている。そこの宿泊施設は旅館やホテルのようなものではなく、合宿とか林間学校の行事とかで泊まるような、外観も内装も無機質で部屋が規則的に並んでいる、所謂あのタイプの宿泊施設だった。自分達が何人連れだったのか、面子に誰がいたのかは出てこなかったので覚えていないが、俺は友達のK(仮称)と二人で行動していた。部屋が一緒だったのかな。

泊まる部屋以外に談話室があり、そこならタバコも吸えるしお酒も置いてあるということで二人でそこへ向かった。長机とパイプ椅子が置いてあり自由に使って良さそうだったのでそこでくつろいでいると、見知らぬ女性グループ数人がその部屋に入ってきた。年齢は俺らと同じか少し年下くらいのようでかなり大きな声で会話をしている。メンバーの誰かがこっちに話しかけてきて一緒に酒を酌み交わすことになった。そのときの会話の詳細は憶えていないが、彼女たちは全員絵か何かをやっている美大生だということを言っていた。ひとしきり談笑を終えたところで、俺は持ってきたガンプラを見たいと言ってKを残して自分の部屋に先に戻った。

自室には5〜6個のガンプラの箱があって一つずつ開けて中身を確認していった。中には組み立て済みのガンプラが入っていて、その中にガンダムMk-Ⅱのキットがあったので、頭だけ取り外して家にあるMk-Ⅱに移植できないかとかそんなことを考えたりしながら各キットを注意深く観察していた。そうしているうちに、かなり時間が経ってしまったのでKのところに戻ろう思いその部屋を後にした。

Kのところに向かうと、彼は一緒にいた女グループの内の一人とベットに寝そべって談笑していた。その子は髪が水色のボブカットで、とてもよく笑う女の子だった。話が合うようで二人はとてもにこやかに何かを語っていた。俺がかなり気まずくなってそこを離れた。

そこでシーンが変わって、気づいたら談話室ではなくどこかの個室にいた。Kとさっきの女の子が向かい側にいて、俺の隣には別の女の子がいた。その子はKといた子よりも長くて赤みがかった茶髪を後ろで縛っていた。窓から差し込む月明かりが丁度逆光になってしまっていて、俺のいる位置からだと彼女の顔はよく見えなかった。俺以外の三人はみんなかなりお酒も進んでる様子で、意気揚々と声高に会話を繰り広げていて、俺とのテンション差が激しい。赤髪の女の子が俺がバツの悪さを感じていることを察したのか不意に身をこちらに乗り出しながら質問を投げかけてきた。


「星って夜になるとすごい光ってるじゃない?」

「うん?そうだね、あれって星が爆発したときの光が何光年も先の地球まで届いてるっていうよね。」

「そう。もし君が光るんだとしたら何色の光になりたい?」

「自分が星になるのだったらってこと?」

「違う違う。星になるとかじゃなくて、何色の光になりたいかって聞いてるの。」

「難しい質問するんだね。そうだなぁ、俺は色とか分からないくらい強い光になりたいなぁ。光量が強すぎて白んでるっていう意味では白になるのかな?これで答えになってる?」


俺がそう答えると、彼女は腕を組みわざとらしくウンウンと頷きながら、

「やっぱり。ギター弾く人ってさっき聞いてたけど、そういう人の答えだね!」

と言った。

「ギタリストっぽい答えってなんだよ。感性がって事?そういうものなのかな?」

と思ったのだが、他の三人が俺の答えにやけに満足そうな表情をしていたのでそれ以上の追求はしなかった。そこで会話も止まってしまったので

「俺も酒飲もうかな?まだある?」

と言って俺が残りの酒を物色しようとすると

「お酒ならそこのテーブルに、ビール入れたコップがあるよ」

と言いながら、彼女がテーブルに手を伸ばして酒を取ろうとしてくれた。よく見るとそれはコップにタバコの吸い殻が入っているだけの物だった。茶色いフィルターがビールの色に見えたのだろう。そのコップを手に取り、今にも口を付けようとする彼女を慌てて止めた。

「ちょっと飲み過ぎなんじゃない?大丈夫?」

ふらつく彼女の身体を支えながら尋ねたが、泥酔状態の彼女は言葉にならない返答をするだけだった。

 

その後ももう少しやりとりがあった気がするけど憶えているのはここまで。

彼女が隣にいる間、終始俺の太ももに手が当たっていて、その感触が起きた後もやけに生々しく残っていた。結局最後まで部屋の暗さと月明かりのせいで彼女の顔は見えなかったのを少し残念に思った。