ソング・アバウト・アン・エンジェル
どちらの細胞がこの感覚を享受しているのか分からないくらいに他者との境界線が曖昧になる。そんな体験をしたとき、「触れる」という事、それは「痛みをもって知る」とそのまま言い換えれると思った。その痛みが生きている心地を与えてくれることもあれば、呼吸を困難にさせることもあるということも分かった。
「触れたい」「触れられたい」「手放したくない」「もう一度触れたい」それらの想いは僕たちの行動規範に結びついている、それなのにちっとも届かない。だから、僕たちは表現をせざるを得なくなるんだ。
表現の中でだったら、君を、あの人を、過去の僕たちを、抱きしめてあげることも指先でなぞることも、いっそ絞め殺してあげることもできる。
そうやって何かを救ったり殺したりしながら生きているんだと再確認することができた。僕が待っていてもいなくても季節は巡りまたやってくる。
まだ僕たちは渋谷の街を走り続けてるのかもしれない、あのときみたいに夜明け前の光に怯えたりはせずに。